こんにちは。
今回も小説投稿サイト「小説家になろう」から個人的に好きな小説を若干のネタバレありで独断と偏見を持って勝手に紹介します。
今日紹介するのはこちら
陰の実力者になりたくて!
究極の中二病が異世界いったらこうなる話
内容紹介
「陰の実力者になりたくて!」は「坂野 杏梨」氏著の勘違いコメディ系異世界ファンタジー
イラストは「逢沢 大介」氏
まずは公式あらすじ
主人公でも、ラスボスでもない。
普段は実力を隠してモブに徹し、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す「陰の実力者」。
この「陰の実力者」に憧れ、日々モブとして目立たず生活しながら、
力を求めて修業していた少年は、事故で命を失い、異世界に転生した。
これ幸いと少年・シドは異世界で「陰の実力者」設定を楽しむために、
「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく(おふざけで)暗躍していたところ、
どうやら本当に、その「闇の教団」が存在していて……?
ノリで配下にした少女たちは勘違いからシドを崇拝し、
シドは本人も知らぬところで本物の「陰の実力者」になっていき、
そしてシドが率いる陰の組織「シャドウガーデン」は、やがて世界の闇を滅ぼしていくーー。
『小説家になろう』の超人気作が、加筆修正の上、待望の単行本化!
こんな感じ、もう少し詳しく書くと
主人公のシドは前世、もの心つくころから「陰の実力者」憧れていた。
陰の実力者とはなんぞやというと、主人公陣営やラスボス陣営とは別の、時々現れては主人公に助言したり、立ちはだかったり、街を裏で支配していたりする圧倒的強者のこと。
主人公がピンチの時颯爽と現れて、主人公が苦戦した敵を一瞬で倒し、意味深な言葉を放って正体を告げずに去っていく、というよくあるアレです。
シドはそんな存在になりたいとずっと憧れていましたが、憧れるだけでなくマジでなろうとして徹底的に修行しました。
裏で激しい修行をしながら、学校ではモブAとして存在を隠していました(隠れてない)。
人間相手ではもう敵無しなくらいに鍛えたシドですがとうとう現実に向き合う時がきました。
それは陰の実力者なんていない、という中二病からの卒業、ではなく
いくら体を鍛えても所詮核を使われたら終わりだよね、という現実でした。
しかし魔法とかオーラ的なものががあればいける!いままで見つかってないだけで探せばきっとある、と考え
瞑想したり、全裸で花畑を駆け巡るといったありとあらゆる手段を試していたら、あっさり死んで転生しました。
そして転生した世界ではなんと魔法があるではないですか、こんな中二病を煮詰めたようなやつが魔法のある世界に転生なんてしたら……もう0歳のころから魔法を極めるために練習ですよ、ただし赤ちゃんムーブは忘れない、陰の実力者はあくまで陰に徹するのだ。
こんな導入で始まるこの物語、主人公はかなりヤバいやつですが、意外と現実主義で、あくまでこれはごっこ遊びであり、自分はかっこいい陰の実力者ムーブができればそれで満足、この世に魔王なんていないし勇者もいない、
と変な所で常識人ぶりを発揮します。
ですがそれは前世での常識で、この世界には明確な悪や特別な力をもった英雄なんかもいて、
それを主人公が陰の実力者ごっこでうまい具合に引っ掻き回していく(主人公は無自覚)
こんな導入の勘違い系ファンタジーです。
もう少し詳しいあらすじを書くと。
シドは小さいころから修行やお小遣い稼ぎとして(こっそり)盗賊を狩ったりして遊んでいましたが、ある日エルフの少女を助けます。
身よりもなさそうだし、より本格的な陰の実力者ごっこのためにこの少女を仲間にしようと、(意味深な顔で)なぜさらわれたのか、君は特別な存在だ、この世界の闇、自分は邪神ディアボロス復活阻止のために陰で活動している、などと適当に”自分の考えた設定”を語ったところ、少女は真に受けてシドの仲間になります。
そしてシドは自分のことをシャドウ、君の名前はアルファ、組織の名前はシャドウガーデンだ……と無駄に壮大に語り、よしこれでより質の高い陰の実力者ムーブができるぞと楽しんでいるあいだに、アルファは同じ境遇の仲間をどんどん拾ってきて、シドが稽古を付けていることもあり、シャドウガーデンは強力な陰の組織として育っていきます。
そしてシドが適当に作った設定は実は本当に存在していて、本当に世界は悪に侵食されていて今までシャドウは一人で戦っていた、シャドウ様凄い、シャドウ様のために組織を大きくして手助けしよう、と組織は巨大化の一途をたどり、シャドウガーデンは陰ながら悪と戦い続けていく……
が主人公はそれを知らない、実際に見ても演技すごいなーという感想(主人公が強すぎるため)。
組織はみんな女なため、君ら仲いいねとなんとなく疎外感、もうごっこ遊びは卒業してこうして付き合ってくれるのは命の恩人だから仕方なくなのかな、とか的外れなことを考えるも態度はつねに意味深、なぜか正解を引き続ける発言ばかりなので、シャドウ様には報告しなくてもすでに知っている、単独行動の邪魔はしてはいけない、
という風潮があり、徹底的にかみ合っているんだかいないんだかの状態で話が進んでいきます。
世界観はシリアスですが、シドの視点になると途端にコメディになり、
シドの独特な言い回しがいちいち面白くめちゃくちゃ笑えます。
勘違い系は結構ありますがこれはかなり質が高いです、
勘違い系は下手すると鈍感すぎる主人公にイラっとしたり、都合の良すぎる展開に呆れたりしますが、
これはあまりそういうことを感じませんでした、
多分主人公が突き抜けすぎてる、とかシリアスだけど内在するコメディ空間がそれらを許してしまうからかもしれません。
これほどの笑えるなろう小説はなかなかないのでぜひ読んでみてほしいです。
キャラクターについて

●シド 主人公、表ではモブA、裏では無敵の陰の実力者として全力で異世界を楽しんでいる、お小遣いが少ないのですぐ金に釣られる(ちなみにシャドウガーデンに言えば巨万の富がポンと手に入るが知らない)
●七陰 シャドウガーデンの初期メンバーにして大幹部の7人、アルファ、ベータ……と順番に名付けられていて、シャドウに直接指導してもらったりして個々の能力が非常に高い、命の恩人のシャドウ様大好き。
●シャドウガーデンの構成員 続々増加中、ちなみに全員女の子。
●クレア ブラコン気味な姉、弟をまともな職に就かせたいと思っている、弟の正体はしらない
ほかにも王女のアレクシアや、思い込みの激しいローズ先輩などおもしろ…魅力的なキャラがたくさん、
ちなみに男キャラは名前がことごとく適当でドエム、とかジミナ・セーネンとかでとてもシュール。
恋愛色はまったくない。
陰の実力者になりたくて!
現在3巻まで大好評発売中、コミカライズもあるよ。
コミカライズがほぼ書籍化と同時だったので、めちゃくちゃ力入れてるのが分かります。
小説はこちら↓
コミック版はこちら↓

陰の実力者になりたくて! (1) (角川コミックス・エース)
僕はなろうのコミカライズ版はクオリティが低くてあまり好きではないのですが、
この漫画版はかなり面白いです。
小説版は視点によって見方が違うギャップによる笑いがありますが、漫画版はそういうことできないので最初からギャグに寄っています。
ギャグマンガとして原作既読でも新鮮に読むことが出来ました、むしろ既読組ほど読んでほしい出来です。
書籍化で残念だったのは主人公の必殺技、「アイ・アム・アトミック」
まあこれだけ見ればかっこいいと思わなくもないですが、原作初期は「アイ・アム・テポドン」だったんですよね、テポドンてw
盛り上がってさあとどめだ、というところにテポドンというシュールさがめっちゃ笑えただけにこの修正はもったいない、伏字(テ〇ドン)とかじゃだめだったのだろうか……
そんなシュールな勘違いファンタジー「陰の実力者になりたくて!」超おすすめです。
あとWeb版更新してください(´;ω;`)